この記事では自動車技術、バッテリー技術関連で使用される用語の「暗電流」について解説します。
自動車の暗電流のはなしです。
暗電流とは?
暗電流とは、自動車、バイクなどがエンジンOFFで駐車中の状態においてバッテリーに流れる放電電流のことです。
自動車では車両のECUなどがリセットされないための待機電力を確保するためにかなり小さな電流をバッテリーから供給する必要があります。
自動車はエンジン停止後しばらくはランプやライト等が点灯し車両システムのいくつかの負荷の電流が流れますが、やがて消灯しリレーが切り離されて暗電流だけが流れる状態となります。
車両の暗電流はどのくらい?
一般的に現在の車両の暗電流は50mAほどだと言われています。
これは、車種や車格、メーカーオプション等の装備によって変わります。
カーメーカーは暗電流の設計も考慮して、バッテリーサイズを決めています。
例えば高級車で装備満点のレクサスなんかはかなり大きいバッテリーを積んでいますし、装備が比較的少ない軽自動車は最低限の小さいバッテリー搭載になっています。
暗電流も考慮してバッテリーサイズを決めます。
バッテリーサイズを決める要因は暗電流だけではないですが、バッテリー上がりを防止するためにも車両の暗電流に合ったバッテリーサイズにすることは重要です。
暗電流のバッテリーへの影響は?
暗電流が及ぼすバッテリーへの影響は「劣化」と「充電量低下」の2点と考えます。
どちらもバッテリーの一番の困りごとである「バッテリー上がり」に関係する内容です。
劣化に影響
暗電流があることで、バッテリーは放電してしまいますので、少なからずダメージが蓄積していきます。
バッテリーは充電放電を繰り返すことで徐々に劣化していきますので、暗電流が多い状態では少ない状態よりも充放電の総量が多くなるため劣化しやすくなってしまいます。
充電量の低下
暗電流によって充電量が減るので、放置によってバッテリー上がりするまでの期間にも影響が出ます。
簡単な概算にはなりますが、仮に車両になにか異常があって「暗電流が異常な500mAの状態」になっていた場合と、「暗電流が正常な50mAの状態」で比較した場合を具体的にご紹介します。
バッテリーの容量が40Ah、放置開始のSOC(State of Charge:充電率)が90%として考えてみると以下の通りの計算となります。
この試算結果から、通常は放置しても30日程度はバッテリー上がりをしないのに、暗電流が異常な状態では3日程度でバッテリー上がりする可能性があることがわかります。
このように暗電流はバッテリー上がりに対して非常に重要な要素であるということをご理解いただけたでしょうか。
試算内容についての注意
この試算結果は適当な条件を設定した試算なので、あくまで目安としてとらえてください。
実際には「バッテリーの自己放電の影響」や「容量時間率の関係」によってSOCは変わってきますし、バッテリー上がりはSOCだけで決定するものではないので、この条件で必ずバッテリー上がりをするというものではありません。
暗電流を減らすにはどうしたらいい?
暗電流を減らすためにユーザーができることはあまりないです。しいていうならカーメーカーが設定した暗電流以上にならないように余計な電装品を取り付けないことです。
どうしても取り付けたい電装品、社外品がある場合は、取り付けることによって暗電流がどのくらい大きくなるのかを把握しておき、暗電流が大きくなってもバッテリー上がりしないように対策を取ることが重要です。
暗電流を減らす対策ではないですが、バッテリーを性能ランクが高く容量が大きいものに交換することによって相対的に暗電流の影響を軽減するというのは有効な方法です。
バッテリーの性能ランクについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考ください。
>>バッテリーの「性能ランク」を徹底解説!