
バッテリーの製品仕様の中で目にすることの多い「Ah」や「時間率」という言葉。
「なんとなくわかるような気がするけど、しっかり説明してといわれてもできないよ」という方が多いと思います。
このページにやってきてくれたあなたは「Ah」と「時間率」についてしっかり理解したいという思いがあるはずです。
この記事では「Ah」と「時間率」についてそれぞれ3つのポイントにしぼって、意味を理解してもらいます。
この記事を読むことで短時間のうちに「Ah」と「時間率」について理解することができるでしょう。
目次
Ahの意味を理解する3つのポイント
Ah(アンペアアワー)とはなんのことなのでしょうか。
Ahを正しく理解するために3つのポイントを使って説明します。
①:Aは電流のアンペア
Ahの「A」は電流の単位のアンペアです。
Ahは容量の単位なので、どれだけの電気を取り出せるか、放電できるかということが重要となります。
電気量を取り出す場合、電池からは電気を放電します。
そのときの放電電流の単位「A」が容量の単位「Ah」に使われています。
②:hは時間のアワー
Ahの「h」は時間のことです。英語で言えばhour(アワー)ですね。
この場合の時間というのは先ほど説明していた放電電流で放電している時間を表します。
分[m]や秒[s]を便宜的に使うこともありますが、基本的に容量の単位に使われるのは時間[h]です。
③:Aとhをかけたのが容量の単位「Ah」
ここまでの説明で気づいているかも知れませんが、①と②のポイントで説明したAとhをかけ合わせたのが、容量の単位「Ah」というわけです。
おさらいすると、以下の式がAhの計算式になります。
放電電流 × 放電時間で取り出せる容量が決まるわけです。
ここでの放電時間については、放電し続けられる限界の時間です。
例として、5時間率容量の場合で説明します。
次のグラフは、放電できる限界まで放電したときの電圧の変化を表したグラフです。
10.5Vの放電終止電圧というところで5時間の放電ができています。
この10.5Vの放電終止電圧までの放電時間を使って容量が計算されるわけです。
5時間率容量の場合は放電終止電圧10.5Vですが、容量の種類によって放電終止電圧は変わりますのでご注意ください。
ここまでの説明でAhについて大体の意味はわかってもらえたと思うので、計算例を説明します。
条件として放電電流は20A、放電時間が5hだとすると、
20 (A) × 5 (h) = 100 (Ah) がその電池の容量ということになります。
ただし、この場合は「5時間率」を用いているので、あくまでも5時間率での容量です。
あくまでもということは、時間率によって何かが変わってしまうということですね。
「時間率の違いによって何が変わってしまうのか」、続いては時間率について説明します。
時間率の意味を理解する3つのポイント
「時間率」の意味を理解してもらうために3つのポイントを使って説明します。
①:時間率によって放電電流が決まる
まず、時間率を変えるということは、先ほど説明したAhの容量を決めるときに使う放電電流が変わるということです。
例えば、5時間率というのは定格容量を1/5して、放電電流を決めています。
定格容量が50Ahであれば、その1/5の10Aが5時間率電流ということになります。
20時間率定格容量が60Ahであれば、その1/20の3Aが20時間率電流です。
○時間率であれば、定格容量を○で割ってやれば、その時間率での放電電流を求めることができます。
時間率によって容量を計算するときの放電電流が決まると思ってもらえればいいです。
時間率を変えるときに変わるのは電流だけでなく取り出せる容量も変わってきます。
そちらについてはポイント②で説明します。
②:時間率と容量の関係
時間率によって、放電電流が変わるという説明をしました。
放電電流が変わると、放電できる時間も変わってきます。
時間が変わるということは「電流」×「時間」で求められる容量も時間率によって変わってくるということです。
以下のグラフはいくつかの時間率での放電カーブを示したものです。
時間率によって放電できる時間が違い、電圧カーブの特性が違うことがわかります。
つづいて時間率を変化させて放電した場合に取り出せる容量についての関係を表したグラフを以下に示します。
5時間率容量が60Ahのバッテリーの例となります。
このグラフを見れば、時間率の変化で容量が変化するという特性がすぐにおわかりいただけると思います。
時間率の数字が大きくなると放電電流が小さくなり、取り出せる容量は大きくなります。
一方、時間率の数字が小さくなると放電電流が大きくなり、取り出せる容量は小さくなります。
このように時間率によって容量は変化します。
時間率によって容量が変化する理由ですが、放電するときの電解液の拡散状態が関係しています。
電流が大きくなるほど電解液の拡散が追いつかなくなり、容量が取り出せなくなります。
電流が小さければ、拡散のスピードが遅いので電解液をより有効に使用できるので取り出せる容量が大きくなります。
拡散が追いつかず容量が取り出せなかった場合でも、拡散が落ち着いてから放電すればその後もわずかに容量が取り出せます。
例えば、5時間率で放電しきった後でも20時間率の電流で放電すればもう少し容量が取り出せるということです。
容量というのは放電する電流によって変わってくるということを覚えておきましょう。
③:時間率容量の種類
バッテリーの用途などによってよく使われる時間率が異なります。
自動車用、バイク用で使われている時間率容量は次の3つです。
- 5時間率容量 [自動車用JIS規格]
- 20時間率容量 [自動車用EN規格]
- 10時間率容量 [バイク用で使用される]
上記の時間率容量について詳しく知りたい方は個別の記事にて説明しているのでそちらを読んでいただけるとより理解が深まります。
Ahと時間率のまとめ
Ahと時間率を理解するためのポイントを振り返ります。
- 「A」は電流
- 「h」は時間
- 「A×h」で「Ah」: (放電電流)×(放電時間)を意味する容量の単位
Ahは容量の単位です。Aとhの掛け算でそのものが容量を意味しています。
つづいて、時間率のポイントです。
- 時間率によって放電電流が変わる
- 時間率によって取り出せる容量が変わる
- 時間率にはよく使われる種類がある(5時間率、20時間率など)
容量の単位である「Ah」を正しく理解することができたでしょうか。
「Ah」が理解できていれば、バッテリーの製品仕様の見方で迷うこともなくなると思います。
時間率についてもその意味が理解できたでしょうか。
用途ごとに意味を理解した上で時間率を使い分けられるようになるとカンペキですね。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。