バッテリーの5時間率容量・20時間率容量の違いは?換算方法も解説

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・バッテリーの容量って5時間率容量だけじゃないの?
 20時間率容量ってなに?

・5時間率と20時間率ってどんな違いがあるの?

・5時間率容量と20時間率容量を簡単に換算する方法ってあるの?

このような疑問を解決できる記事になっています。

5時間率と20時間率、バッテリーの製品仕様に出てきても、どう違いがあるのか仕様を見ただけじゃよくわからないですよね。

この記事では

  • バッテリーの時間率容量とはどんな意味があってどんな試験をして測定されているのか
  • 5時間率容量、20時間率容量とはなにか
  • 5時間率容量と20時間率容量の違いや2つの容量の換算方法

について解説します。

この記事を読めば、バッテリーの容量についての知識が身につきます。
また、5時間率容量と20時間率容量を正しく理解できるでしょう。

目次

バッテリーの容量とは?

バッテリー残量の写真

バッテリーの容量とは、「満充電されたバッテリーの電圧が規定の放電終止電圧になるまで放電する間に取り出すことのできる電気量のこと」です。

えんじろう

これだけではわかりにくいので、丁寧に説明します。

容量測定試験はしっかり満充電することから始まります。

試験をする場合は規格で定められた方法で満充電します。

満充電になったバッテリーの端子電圧をモニターできる状態にして、規定の電流で放電を開始。

例えば、5時間率容量であれば、定格容量の1/5の電流(5時間率電流:0.2C)で放電します。

具体的には5時間率容量の定格値が50[Ah]だとしたら、50×1/5=10[A]の放電です。

放電中の時間に対する電圧変化のイメージをグラフにしました。

5時間率容量説明図
放電することで、電圧は低下していきます。5時間率容量の場合の放電終止電圧は10.5[V]なので、その電圧になるまで放電を継続します。

10.5[V]まで放電できた時間を測定して、次の式で容量を計算することができます。

バッテリー容量の計算式

この考え方は5時間率でも20時間率でも共通です。

違うのは何時間の放電で取り出せる容量なのかであり放電時の電流値[A]が異なります。

5時間率容量とは?

5時間率容量の場合を改めて説明します。

5時間率容量の定義

5時間率容量とは「満充電にしたバッテリーを温度25℃で、5時間率容量の1/5の電流(0.2C)で、電圧が10.5Vに降下するまで放電したときのバッテリーの容量(Ah)」です。

横軸を時間、縦軸をバッテリーの端子電圧として、放電中のイメージをグラフにしました。

5時間率容量説明図
例えば、5時間率容量の定格値が50[Ah]だとしたら、50×1/5 = 10[A]で放電します。

このとき放電できた時間が5.1時間だとしたら、10[A]×5.1[h] = 51[Ah]

このバッテリーの実力としては51Ahなので、スペックの定格容量の50Ahよりも実際の容量は大きいことになります。

5時間率容量は今までの日本ではバッテリーの重要指標

5時間率容量は日本のJIS規格で採用されており日本向けのJIS規格バッテリーのスペックで使われています。

例えば日本最大のカーバッテリーメーカーであるGSユアサの市販品エコ.アールレボリューションシリーズのカタログには以下のような記載があります。

GSユアサのカタログ例
出典:エコ.アールレボリューションカタログ

GSユアサのカタログにも5時間率容量(Ah)が記載されていますね。

つまり、5時間率容量はバッテリーの性能を確認する上で重要な指標であるということです。

2019年改正のJIS規格から5時間率は参考値に

5時間率はこれまでそして現在もカタログ上に記載されるぐらいの重要指標だったのですが、2019年に改正された「JIS D 5301 始動用鉛蓄電池」で状況が変わりました。

この改正では、国際規格であるIECとの整合のために、従来JISで規格値であった5時間率容量が参考値となり、代わりに20時間率容量が追加されました。

今後日本向けのJISバッテリーのカタログ値も20時間率に置き換わっていく可能性があります。

20時間率容量とは?

5時間率容量と考え方は一緒ですが、20時間率容量についても説明していきます。

20時間率容量の定義

20時間率容量とは「満充電にしたバッテリーを温度25℃で、20時間率容量の1/20の電流(0.05C)で、電圧が10.5Vに降下するまで放電したときのバッテリーの容量(Ah)」です。

横軸を時間、縦軸をバッテリーの端子電圧として放電中のイメージをグラフにしました。

20時間率容量の説明図
例えば20時間率容量の定格値が60[Ah]だとしたら、60×1/20=3[A]で放電します。

このとき放電できた時間が20.2時間だとしたら、3[A]×20.2[h]=60.6[Ah]

このバッテリーの実力としては60.6Ahなので、定格容量の60Ahよりも実際の容量は若干大きいことになります。

20時間率容量は欧州のEN規格バッテリーで使用

20時間率容量は、主に欧州のEN規格で採用されており、欧州向けのEN規格バッテリーの仕様に使われています。

現在はトヨタ向けのいくつかの車種でEN規格のLNバッテリーが採用されており注目度が上がっています。

JIS規格とEN規格の違いについては以下の記事で解説しています。

EN規格で20時間率が使われていることの例として、GSユアサの市販品エコ.アール ENJシリーズのカタログには以下のような記載があります。

GSユアサのカタログ例(EN)
出典:エコ.アール ENJシリーズカタログ

GSユアサの日本向けEN規格バッテリーのカタログには20時間率容量(Ah)が記載されていますね。

日本向けに発売しているEN規格バッテリーでも、当然EN規格に合わせて20時間率で仕様を設定しているということです。

使用されるバッテリーによって5時間率容量で記載される場合と、20時間率容量で記載される場合があるので注意しましょう。

5時間率→20時間率容量の換算

バッテリーから取り出せる容量というのは、放電率(放電電流の大きさ)で変わります。

5時間率と20時間率では同じバッテリーでも放電率が異なるので、5時間率容量と20時間率容量の値も異なります。

では実際にどのくらい違うのか、簡単に換算できるようにできればいいのにと思うかも知れません。

しかしながら、どのバッテリーにも適用できる万能な換算式というのはありません。

なぜならバッテリーの設計(電槽サイズ、電解液濃度、極板枚数、活物質)によって、この換算式の係数は変わってしまうためです。

参考記事>>電解液とは【バッテリー用語解説】

それでもある程度同じくらいの換算係数に収まるというのも事実なので、「JIS D 5301 始動用鉛蓄電池」に記載されている容量を使って、換算係数を調べてみました。

5時間率、20時間率換算表

表の見方ですが、一番左にJIS規格の型式があります。乗用車でよく使われるB19~D31の範囲としました。

容量の値は規格に記載されている値となります。

「5HR→20HR換算係数」の列は、5時間率容量を20時間率容量に換算するときに掛ける係数です。(ちなみに、HRはHour Rate(時間率)の略です。)

平均値は1.15なので、20時間率容量は5時間率容量よりも少し大きくなるということですね。

一方、「20HR→5HR換算係数」の列は、先程の反対です。平均値は0.87となります。

例えば、5時間率容量が50Ahだとわかっているバッテリーがあったとして、20時間率容量のおおよその値は、

えんじろう

50[Ah] × 1.15 = 57.5 [Ah]

20時間率容量が60Ahだとわかっていて、5時間率容量のおおよその値を知りたい場合は、

60[Ah] × 0.87 = 52.2[Ah]

となります。

この係数はあくまでこの条件で計算した場合の係数ですので、これが正解というものではなく状況によって値を調整して使う場合があるものだということをご理解ください。

5時間率容量・20時間率容量に関してのまとめ

5時間率容量と20時間率容量について、どんなものでどういう関係があるのかという視点で解説しました。

ポイントをまとめます。

  • 放電電流[A]×放電時間[h]=容量[Ah](バッテリーに蓄えられている電気量)
  • 放電率によって、容量は異なる。(20 HRの方が5HRより容量は大きい)
  • 容量のどちらかがわかれば換算係数によってもう一方の値は推定できる

JISが国際規格のIECに合わせて、20時間率を正式採用して5時間率を参考値とする動きがありました。

今後は20時間率が日本でもスタンダードになる可能性があります。

それでも市販バッテリーの多くは5時間率容量を使用していますので、正しい知識を身につけてうまく使い分けられるようにしておくと安心ですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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