
こんにちは!バッテリー開発員の鉛治郎(えんじろう)です!
その経験を活かして解説します。
最近トヨタが部品のグローバル共通化を推進しており、バッテリーは欧州規格であるEN規格サイズを採用しています。
これまでの日本車では日本の産業規格であるJIS規格のバッテリーが使われていたため馴染みのない方も多いと思います。
JIS規格とEN規格の違いがわからないという方のために、2つの規格の違いをわかりやすく解説していきます。
目次
バッテリーのJIS規格とは
日本で定められた規格
JIS規格というのは「日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standardsの略)」のことです。
日本の産業製品に関して、寸法規格や測定方法、試験方法などが定められた日本の国家規格です。
自動車用のバッテリーも当然このJIS規格によって、形状や型式の呼び方や容量を測定方法、寿命性能を測定するための試験方法等が定められています。
JIS規格の形状寸法、型式
一般のユーザーにとって特に重要となるのは形状、型式についての取り決めです。
JIS規格の型式は、〇〇B19や〇〇D23などといった呼び方をしています。(〇〇の部分は性能ランクという形状とは関係ない数字が入ります。)
「BやDというアルファベット」と「その次の数字」で形状寸法が決定します。
型式の呼び方と形状寸法についての概要です。例は38B19Lです。
JIS規格の性能試験方法
バッテリーは電気を蓄えて、必要な機器に電力を供給することが目的の部品です。
バッテリーを製品として世に出すにはバッテリーがどのくらいの電力を蓄えていて目標とする性能を満足しているかを試験する必要があります。
そこで必要となるのが充電容量を測定する容量放電試験です。
JIS規格では5時間率容量放電試験が規定されています。
この試験によって充電容量の性能が目標を満足しているかを確認することができます。
放電できる容量はバッテリーの性能を表す重要な指標となります。
あなたが乗っている車に合ったサイズのバッテリーを使用しないと思わぬ不具合の原因となります。
車両の必要容量に適合した型式のバッテリーを選定することが重要です。
- 日本で定められた規格
- 形状寸法や型式が決められている (B19, D23など)
- 性能試験の方法が決められている (5時間率容量試験など)
バッテリーのEN規格とは
欧州で定められた規格
EN規格というのは、「EU(ヨーロッパ連合)における統一規格(European Norm)」のことでEuropean Standardとも呼ばれます。
EN規格自体の細かいことはここでは省いてバッテリーだけについて説明します。
バッテリーのEN規格では日本と異なる欧州の基準でバッテリーの寸法、形状、型式の呼び方、性能試験方法等が取り決められています。
EN規格で用いられているLNサイズは、もともとはドイツのDIN規格で取り決められていたものですが、EUの成立から欧州全体で語られることが多くなったため、現在はEN規格で呼ぶことが多くなっています。
昔から欧州の輸入車が好きな方は、DIN規格のバッテリーと言ったほうが馴染みがあるのではないでしょうか。
EN規格は日本とは異なる形状寸法、型式
日本のJIS規格では〇〇B19や〇〇D23といった呼び方でしたが、EN規格ではLN○(○に数字が0, 1, 2,…と入ります)と呼びます。
LNサイズは高さと奥行きはすべてのサイズで同じで、○のところの数字が大きくなると幅が長くなるという寸法を採用しています。
EN規格では日本のJIS規格とは異なる形状寸法が決められています。
その比較については後で説明していきます。
EN規格は日本とは異なる試験方法
バッテリーの試験も様々あるのですが試験についても日本と欧州で別の試験方法を採用しています。
基本的な考え方は同一のものも多いですが、例えば先ほど説明したバッテリーの容量試験である5時間率容量放電試験は欧州では存在しません。
EN規格では20時間率容量放電試験で容量を測定しています。
容量放電試験については以下の記事で解説はしていますので、ご参考ください。
- 欧州で定められた規格
- 形状寸法や型式が決められている (LNサイズ)
- 性能試験の方法が決められている (20時間率容量試験など)
バッテリーの形状・サイズ・型式の呼び方の違い
JIS規格とEN規格の一番の違いは形状や大きさ、そしてその大きさを表す型式の呼び方の違いです。
鉛バッテリーとしての中身は大きな差がありません。
電池構成はどちらも6セルで、電池電圧も一緒です。(とはいっても、各メーカー様々な設計の工夫がなされて性能競争しています)
JIS規格とEN規格の形状の違いを図にまとめました。
JIS規格とEN規格の形状違い
- 高さがENのほうが低い
- ENは下留め固定ができる
- ENは端子が太のみ
EN規格のLNサイズバッテリーはJIS規格よりも高さが低く設計されています。
自動車のエンジンルームなどに配置する際のレイアウトの自由度が高くなります。
JIS規格とEN規格 使用している車の違い
JIS規格バッテリーを採用 | EN規格バッテリーを採用 | |
トヨタ 以外 |
トヨタ以外の日本メーカー (ホンダ、日産、マツダ等) |
欧州メーカー (VW、BMW、メルセデス・ベンツ等) |
トヨタ | トヨタの比較的古い車種 | トヨタの新しい車種、特にハイブリッド車 (2015年ぐらいから) |
上の表のような状況で、トヨタ車はJISからENへの過渡期であるため車種や年式ごとにどちらのバッテリーを使用しているか確認が必要です。
トヨタ車ユーザーは、JISとENが混在している状況ですが、これから新車を買う場合はEN規格のLNバッテリーが載っている確率が高くなります。
今後はトヨタに追随していく動きがあると思うのでJIS規格バッテリーは姿を消していくかも知れません。
それでも日本でしか販売されていないような軽自動車ではJIS規格バッテリーが残り続けるのではないかと予想しています。
バッテリーのJIS規格とEN規格の違いまとめ
バッテリーのJIS規格とEN規格の違いについて解説していきました。
違いをまとめます。
- 寸法形状、型式が違う
- 採用されている性能試験方法などが違う
- 使用している車両が違う(トヨタはEN化を加速)
今後日本でもグローバル共通化の概念は広がって、EN規格の方に合わせる動きが加速する可能性が高いです。
JIS規格バッテリーの扱いには慣れていてよく知っているという方も、今後はEN規格バッテリーについてもよく知っておく必要があると思います。
以上、ご参考にしていただけましたら幸いです。