バッテリーの5時間率容量とは?グラフでわかりやすく解説!

なにかの購入を検討しているとき製品の仕様を見ていて、「ん?これはなんのことだ?」ってなる瞬間ってありますよね。

バッテリーにおいても専門用語が多くて、なんとなくわかるけど正確にはよくわからない言葉ってあると思います。

この記事では「バッテリーの製品仕様を見てたら"5時間率容量"って書いてあったけど、"5時間率容量"ってよくわからないなあ。"5時間率容量"ってなんなんだろう?」という疑問にお答えします。

「詳しい説明はいいから結論が知りたいよ」って方のために結論を先に言いますと5時間率容量とは以下で定義されています。

5時間率容量とは「満充電にしたバッテリーを電解液温度25±2℃で、5時間率容量の1/5の電流(5時間率電流:0.2C)で、放電終止電圧10.5Vに降下するまで放電したときのバッテリーの容量(Ah)」です。

「ちょっと意味がわからないよ。もっとちゃんと知りたいよ。」と思った方は、この記事を読み進めてください。

バッテリー購入する前に製品仕様をしっかり理解したいという方の助けになれるよう、わかりやすく解説します。

バッテリーの容量について知ろう

まずは5時間率の説明をする前にバッテリーの容量を正しく理解しておきましょう。

自動車用のバッテリーに限らず、世の中にはバッテリーと呼ばれるものが身近にあります。
例えば、今まさに手にお持ちのスマートフォンのバッテリーです。
スマートフォンのバッテリーも容量が大きければ充電せずに長く使用できますし、容量は重要なスペックになりますよね。

自動車用のバッテリーは使い方が違う部分があるので一概に同じとは言えないですが、容量が重要なスペックであることは間違いありません。

容量とは

教科書的に言うなれば、「容量とは満充電されたバッテリーの端子電圧が所定の放電終止電圧になるまで放電する間に取り出すことのできる電気量のこと」です。

なんのこっちゃとなってしまいそうな表現ですが、後で詳しく説明しますのでもう少し読み進めてください。

とりあえず今のところは「容量は電池に蓄えられている電気量のことだ!」ぐらいの理解でも問題ないです。

容量の単位は「Ah」

電流のイメージ
イメージがしやすいように容量を「単位」を用いて説明します。
バッテリーの容量を表す単位は「Ah」(アンペアアワー) が使われます。

この単位が容量そのものを表していると言っても過言ではありません。

どういうことかと言うと

  • 「A」(Ampere:アンペア) が電流
  • 「h」(hour:アワー) が時間

を表しています。

つまり、容量は単位が意味するところの次の式で表すことができます。

容量の計算式この式の通り、容量は (放電する電流) ✕ (放電できた時間) で計算することができます。

この計算式で具体的に容量を求めるために、放電する電流や放電終了の条件を決めなければなりません。
その取り決められた容量の1つが「5時間率容量」というわけです。

容量の種類

この容量の考え方は5時間率容量だけではなく、他の容量にも使われます。

自動車用バッテリーやバイク用バッテリーでよく使用される容量の種類は

  • 5時間率容量
  • 20時間率容量
  • RC(リザーブキャパシティ)
  • 10時間率容量 [バイク用で使用される]

などがあります。

この記事では5時間率容量について説明しますが、他の容量についても考え方はほとんど同じです。

5時間率容量の定義

5時間率容量とは「満充電にしたバッテリーを電解液温度25±2℃で、5時間率容量の1/5の電流(5時間率電流:0.2C)で、放電終止電圧10.5Vに降下するまで放電したときのバッテリーの容量(Ah)」です。

わかりにくい言葉もあると思うのでかみくだいて説明します。

満充電

まず容量の試験をするときバッテリーは満充電でなくてはいけません。
どういう状態が満充電なのかは規格で決められています。

規格の内容は以下の通り

充電は,次に示すいずれかの方法で実施する。これらの充電を完了した状態を,満充電という。すべての試験は満充電状態で行い,電解液面は,最高液面まで満たした状態とする。
a)定電流充電法 1  5 時間率電流 I5で,15 分ごとに測定した充電中の端子電圧又は温度換算した電解液密度が 3 回連続して一定値を示すまで充電を行う。(以下略)

出典:JIS D 5301 始動用鉛蓄電池 -JISC日本産業標準調査会-

上記を要約すると「5時間率電流充電して、電圧か電解液の密度(比重)が一定になれば満充電ですよ」ということです。

通常のバッテリー充電器とはちょっと異なる方法なのでとっつきにくいですが厳密にはこういう規定が定められています。

ご家庭などでバッテリーを充電する際には、ここまで気にせず、充電器の取扱書に記載された方法にしたがえばOKです。

電解液温度

電解液の温度は25±2℃で試験を実施するように規定されています。
(参考:電解液とは?)

なぜ25℃に規定されているかと言うと

「温度によって取り出せる容量が変わってしまうため、25℃で統一して試験をする」ためです。

±2℃の部分はピッタリ25℃とはせず±2℃の余裕をもたせています。
ピッタリ25℃で規定しないのは

  • 電解液温度を測定する温度計の精度の問題
  • バッテリーの温度調整をする水槽や恒温槽の精度の問題
  • ±2℃の温度範囲では容量に違いが出ない

などの理由があるためです。

5時間率電流(0.2C)

5時間率容量の1/5の電流が5時間率電流となるわけですが、

「5時間率容量を求める試験なのに、試験する電流を5時間容量から計算しろってなんかおかしくない?」

と私も最初思っていましたが、そういう疑問は置いておいてとりあえずは定格容量を用いて5時間率電流を計算します。

定格容量とは「そのサイズではこれだけの容量がありますよ」とJISが決めていたり、バッテリーメーカーが決めていたりする容量値のことです。

例えば、定格容量が52Ahの「80D23バッテリー(GSユアサのグランクルーズシリーズを参考)」の場合を考えると

52Ah の5分の1は 52 ÷ 5 = 10.4 [A]

10.4 [A]がこの場合の5時間率電流(0.2C)となります。

5時間率電流の後ろに(0.2C)と書いてありますが、これも5時間率電流を表す「Cレート」という電池業界ではよく使われる表記です。

5時間率であれば 1 ÷ 5 = 0.2Cですし、20時間率であれば 1 ÷ 20 = 0.05Cです。

電池の開発をするなら必須知識ですが、こういう表記もあるんだなぐらいの理解で問題ありません。

放電終止電圧 10.5V

5時間率電流でバッテリーを放電していくと、だんだんバッテリーの電圧は低下していき、容量がなくなると一気に電圧が降下してバッテリーは空っぽの状態になります。

「バッテリーがもう空っぽになったので放電を止めます」という電圧が放電終止電圧です。

5時間率容量試験の場合は放電終止電圧が10.5Vに規定されています。

イメージがつきにくいと思うのでグラフを使って説明します。

5時間率容量の放電グラフ

5時間率容量放電時の放電時間と放電電圧の関係をしめしたグラフです。

5時間率容量の放電電圧と放電時間のグラフ
グラフを見ていただければわかるように、バッテリーは放電を開始すると電圧が低下していき、やがて放電終止電圧の10.5Vに到達します。

10.5V到達までの放電時間を計測して、(放電電流) ✕ (放電時間)により、5時間率容量が求められます。

5時間率容量の具体例

ここまでの説明をより理解するために、具体的な5時間率容量の測定結果例を使って説明します。

先ほどのグラフにおいて放電できた時間が以下のようになっていたらどうでしょうか。

5時間率容量の放電グラフ_具体例
放電できた時間が定格の5時間ピッタリよりも長くなった場合、定格容量である52Ahよりも実際の容量は大きくなります。

計算してみると、

10.4[A] ✕ 5.2 [h] = 54.08 [Ah]

となりました。

定格容量の52Ahよりも大きくなりましたね。
このように実際に測定してみると、5時間率容量というのはメーカーが仕様として提示している容量よりも少し大きくなります。

つまり製品仕様に記載の定格5時間率容量は基本的には最低限みたさなければならない容量であると考えましょう。
ただし、例外もあるのでこのあと説明します。

バッテリー製品仕様の定格5時間率容量を確認

国内で人気のバッテリーcaos (カオス) の製品仕様 (要項表) を見てみましょう。

caosとGSユアサの5時間率容量表記の比較
caosは同業他社と比較しても圧巻の容量表記になっています。

例えば、先ほど紹介したGSユアサの80D23の52Ahに対して、caosは100D23で58Ah表記となっています。

これは先ほど説明した5時間率容量の試験をして58Ahを実際に叩き出したということです。

要項表の注記にもあるように試験結果であり保証値ではないとしています。

つまり同設計のバッテリーで試験をして叩き出した数字であるが、出荷後の保管状態によっては58Ahが出る保証はないと保険をかけています。

要項表への容量記載値は次の2種類があると思います。

  • 自社のアピールのため攻めた定格容量にする
  • 出荷後のことも考えて標準的な定格容量にする

推測の部分もありますが、各社の思惑の違いで製品仕様(要項表)への5時間率容量記載内容も変わってくるのではないかと思います。

通常は定格容量以上になる設計

GSユアサのように要項表への5時間率容量記載値が攻めた値でない場合は、実際には定格容量以上になるようにして、出荷後に少々長期保管されても問題が発生しない(定格値を下回らない)ようにつくりこまれています。

定格容量以下になってしまう場合も

一方で、購入後使用する時点で定格容量以下になってしまう場合もあります。

Panasonicのcaosは要項表には攻めた大容量を記載しています。
この容量が出るというのは事実ですが、出荷後の保管状態によっては、保証できないと注記しています。

caosの場合は多少容量が減っていたとしても、他社の定格値以上を確保できるでしょうから、caosが良いバッテリーであることには変わりありません。

バッテリーメーカーのマーケティング思想の違いから製品仕様の書き方にも違いがあるのだと思います。
このことを理解した上でバッテリー選びをすると良い選択ができるでしょう。

5時間率容量のまとめ

5時間率容量に対する理解を深めていただけたでしょうか。

5時間率容量は規格で定められた少しとっつきにくい試験によって測定します。
測定した値はバッテリーの製品仕様に記載されます。

製品仕様に記載されている5時間率容量はその値が必ず出るというものではなく、メーカーによって記載意図は微妙に異なっています。

しっかり定格以上が出るように設計している場合もあれば、定格を大きく見せようと攻めた記載をする場合もあります。

出荷から時間が経過していれば記載された容量が出ないぐらい劣化している場合もあるかも知れません。

こういった裏事情も知っておくと、いいバッテリー選びができるのではないでしょうか。

5時間率容量の正しい知識と+αの知識を持つことで、良いバッテリー選びができるようになるといいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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