「バッテリーの電圧チェックをしたいけどどんな方法でやればいいんだろう?」
「バッテリーの電圧ってどんなタイミングで測ればいいんだろう?」
「バッテリーの電圧ってどのくらいなら正常なんだろう?」
こんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
この記事では
- 自動車用バッテリーに使われる鉛蓄電池電圧の基礎知識
- バッテリーの正常電圧について
- バッテリー電圧の具体的な測り方
について解説していきます。
自分の車のバッテリーの電圧が正常値なのかどうか、電圧を確認するにはどんな方法があってどんな測り方をするのか、について理解することができます。
自動車用バッテリーに使われる鉛蓄電池の電圧
どうやってバッテリーは電圧が出てるの?という話からしていきます。
世の中にはさまざまな電池がありますが、なかでも自動車用に使われる鉛蓄電池は活物質(電池のエネルギーを取り出す反応物質)に鉛を使い、電解液には希硫酸を使う構成です。(参考:電解液とは?)
電池の元となる材料の組み合わせによって、起電力と呼ばれる「電池の化学作用によって発生する電圧」が変わります。
身近な例で言えば、使い捨ての乾電池は1.5V、スマホや様々な機器に使われるリチウムイオン電池は3.7Vと、電池の種類によって起電力は異なります。
鉛蓄電池はと言うと「2.1V」になります。
あれ?12Vではないの?と感づかれた方もいるでしょう。
2.1Vは1個(1セル)だけの電池電圧を表しているからです。
電池というのは、直列や並列に組むことで、電池の電圧を上げたり容量を増やしたりすることができます。
つまり、自動車用の鉛バッテリーの場合は、2.1Vの電池を6個直列に並べることで、12Vのバッテリーを構成しているわけです。
「あれ?2.1V×6個=12.6Vになるじゃないか、12Vになっていないよ。」と思われた方はまたまた鋭いですね。
鉛バッテリーは満充電状態において電圧は12.7~12.8Vになっています。
バッテリーの電圧は電解液の比重で決まりますが、バッテリーの設計によって若干異なるので、ぴったり電圧がいくつになると断言できません。
鉛蓄電池1個の電圧はピッタリ2.1Vではなく実際は2.13~2.14Vである場合が多いので、×6したときに12.7~12.8Vぐらいになるわけですね。
ちなみに、電池の場合は構成単位として「個」ではなく「セル」という言葉を使います。
セル(英: cell)はラテン語: cella に由来する英語で、「小部屋」、「小区画」を意味する用語です。
バッテリーの正常電圧について解説
バッテリーの電圧はバッテリーが置かれている状態によって変化しますので、代表的な以下の3つのパターンに分けて解説します。
- 充放電をしていないときの電圧
- 充電中の電圧
- 放電中の電圧
充放電をしていないときのバッテリー電圧
バッテリーに何もつないでいないときや、回路がつながっていないときなどの状態です。
自動車に取り付けられているバッテリーの場合は端子にハーネスがつながっている状態では必ず何らかの機器の待機電流が流れます。
これを自動車の用語として「暗電流」と呼びます。(参考:暗電流とは?)
暗電流は一般的に10~50mA程度で、通常のライトやオーディオ等による負荷放電の1~10A程度よりもかなり小さい値になります。
暗電流が流れている状態はほぼ充放電が無いときといってよく、バッテリー自体の電圧を測定するのに適した状態です。
この状態で正常と呼べる範囲は12.5~12.9Vぐらいです。
この範囲が通常ですが、例外もあるので注意しなければなりません。
測る直前まで充電をしていた場合と放電していた場合です。
充電をしていた場合は12.9Vを超えていても特に問題ありませんし、放電をしていた場合なら12.5Vを下回っていても問題ありません。
この辺りの電圧であれば、ひとまず正常といって良いです。
ですが、鉛バッテリーは電圧だけでは劣化状態を完全に把握することはできません。
この電圧の範囲に入っているからといって安心できないので注意が必要です。
充電中のバッテリー電圧
基本的に自動車はエンジン回転の運動エネルギーを使ってオルタネーターと呼ばれる発電機によりバッテリーを充電します。
充電電圧はレギュレータと呼ばれる部品で電圧が一定に調整され、バッテリーの充電電圧となります。
つまり、充電中においてバッテリーは外部の発電機などによって電圧が支配されているので、電圧測定によってバッテリーのコンディションを確認することはできません。
このとき測定している電圧は発電機などの充電システムが健全に動作しているかを確認するための電圧です。
カーメーカーの設計思想などによって異なりますが、充電電圧はだいたい13~15Vの間で変化します。
車両が減速するときのエネルギーを使ってたっぷり充電したいときには電圧を高めにしますし、充電をひかえて駆動の方にエネルギーをまわして燃費を稼ぎたいときには電圧を低めにします。
充電中は発電側の設定した電圧になっているため、バッテリーの正常・異常をバッテリー電圧から判断することはできません。
充電中の電圧に関しては以下の記事で詳しく解説していますのでご参考ください。
>> あれっ?車のバッテリー電圧が14Vはどんな状態?正常?異常?
放電中のバッテリー電圧
ブレーキを踏まずに、自動車のキーを1段階回したり、スイッチを一回押すと、自動車はACC(アクセサリー)の状態になります。
このとき、オーディオがついたり一部の電装品が使用可能になります。
ACCのときバッテリーは放電が開始した状態です。
放電が開始したバッテリーは徐々に電圧が下がっていきます。
放電中の電圧変化のイメージを図にしました。
負荷放電の電流が増えると、電圧が低下するスピードが速くなるイメージです。
低下した電圧は短時間の放電であれば、負荷が解除されると元の電圧近くまですぐに回復します。
放電中のバッテリー電圧は何もしていないときの電圧よりも低く測定されてしまいます。
放電中はバッテリーが正常かどうかを判断するには向かないですが、放電中であっても12V以上あるような状況であれば問題ないです。
12Vを下回ってくるようだと、放電し過ぎか、充電不足でもともとの充電率が低いか、かなり劣化してきているかのどれかになってくるでしょう。
バッテリー電圧の測り方【測定方法2選】
バッテリーの電圧を測る方法として考えられるのは、いくつかあると思いますが、私も実践している2つの方法を紹介します。
手軽に電圧を測ってみましょう
① シガーソケットを使ってバッテリー電圧を測定
1つ目の方法は、クルマに乗るたびにある程度の電圧の状態を確認することができる方法です。
シガーソケットから電圧を測る方法で、スマホなどの充電もできる「シガーソケットチャージャー」という製品を使います。
以下はAmazonで1000~2000円で購入して現在も使用しているものです。
電圧を測りたい場合は必ず電圧が表示されるタイプを選んでください。
このたぐいの製品はAmazonで検索するとたくさん出てきます。おそらく大差はないのでデザインが気に入ったもの、スマホの充電なども両立するならUSBの充電機能があるものを購入することをオススメします。
>> シガーソケット電圧計をAmazonで確認する
使い方は「シガーソケットに差し込む」
以上です。
「え?簡単すぎない?」と思われたかもしれないですが、そんなものです。
以下はシガーソケットに差し込んで電圧が表示された状態です。
表示される電圧は小数点以下一桁までの表示ですが、目安としては十分です。
使用方法は簡単ではありますが、シガーソケットタイプを使用するときには注意点があります。
シガーソケットタイプはクルマがACC(アクセサリー)またはIG-ON(イグニッションオン)の状態になっていないと作動しません。
前述したようにこの状態では、車は放電が開始されるか、エンジンがかかって充電が開始されるかしてしまうので、充放電がない状態での電圧を測定することはできません。
そこでオススメしたいワザがあります。
車に乗ってすぐにACCに入れて(ブレーキを踏まずにスタートボタンをワンプッシュ)最初の電圧を読むという方法です。
そうすることで電圧が低下する前のほぼ素の状態に近いバッテリー電圧を知ることができます。
この方法でも厳密には既に電圧降下が起こっているので、次に紹介する方法で定期的に電圧の点検をすることもおすすめします。
② デジタルマルチメーターでバッテリー端子電圧を直接測定
2つ目の方法は、デジタルマルチメーターという計器を使って、電圧を測定する方法です。
以下はわたしが使用しているデジタルマルチメーターです。
Amazonで2,000~3,000円で購入しました。
デジタルマルチメーターの値段はピンキリで高額なものは数万円しますが、バッテリーの電圧を測るぐらいなら2,000~3,000円ぐらいの気に入ったものを選べば十分だと思います。
>> デジタルマルチメーターをAmazonで確認する
こだわりたい方はいいものを買いましょう。FLUKEというメーカーがオススメです。
>> FLUKE (フルーク) デジタルマルチメーターをAmazonで確認する
デジタルマルチメーターを使用する場合は、ボンネットを開けるなどしてバッテリーに直接アクセスしないといけません。
あまりボンネットを開けるなどして中を見たことがない方は、自動車の取扱書を確認して正しく作業してください。
わたしの車でご説明します。エンジンルームに搭載されたバッテリーはこんな感じです。
バッテリーのプラス側の端子がカバーで覆われていると思います。
マルチメーターのプローブをあてられるようにカバーを外してください。
マルチメーターの使い方は簡単です。
まず、マルチメーターの測定項目切り替えで以下の画像のようにつまみを合わせます。
これは直流電圧を測定するときの設定です。
バッテリーの電圧は直流なのでこれでOKです。
次に、マルチメーターのプラスプローブ(赤)をバッテリーのプラス端子に、マイナスプローブ(黒)をバッテリーのマイナス端子に押しつけます。
上の画像のように12.○○Vの電圧の値が表示されればOKです。
マルチメーターで電圧を測るときはできるだけバッテリーが安定した状態で測るようにしてください。
走行してきた直後は、充電の影響がバッテリーに残っていて安定していません。
車を使用してから一晩経過して、次の日の走行の前に測定するのがいいでしょう。
バッテリー電圧の測り方まとめ
鉛蓄電池の電圧、バッテリーの正常電圧、バッテリー電圧の測り方を解説しました。
ポイントをまとめていきます。
- 鉛蓄電池は1セルが約2.1V
- 自動車用バッテリーは6セルで12.7~12.8V
- 安定状態なら12.5~12.9Vぐらいが正常値の目安
- 充電中は発電機側が設定した電圧なので13~15Vになる
- 放電中は電圧降下するので12V以上が正常値の目安
- 手軽に毎日確認するならシガーソケットタイプで測定
- 安定状態を測りたいならデジタルマルチーメーターでバッテリー端子を直接測定
バッテリーの電圧はバッテリーの健康状態を確認する上での重要な指標です。
バッテリーの状態を電圧測定で点検することでバッテリーを長持ちさせることにもつながります。
バッテリーを長持ちさせることができれば環境にも経済的にもメリットがあります。
ぜひ今回紹介した方法で電圧測定にチャレンジしてみてください。