車のバッテリーって12Vだと思うけど14~15Vになっていたら異常なの?
14~15Vのときバッテリーはどういう状態なの?
このような疑問に答えます。
私はバッテリー開発経験があります。
自動車がバッテリーに対してこんなことをするとバッテリー電圧はこうなるということを、様々な試験を通じて把握しています。
この記事では以下のことを解説します。
- 自動車用のバッテリー電圧14~15Vはどんな状態か
- 14~15V以外の電圧の場合はどうか
車のバッテリー電圧14~15Vは"充電中"
さっそく結論ですが、バッテリー電圧が14~15Vになっていたら、確実にバッテリーは充電中です。
その理由を説明します。
自動車用の鉛バッテリーは何もしていない状態では12.8V程度(満充電時)になります。
12.8V程度のバッテリーに対して、オルタネーターと呼ばれる発電機から「14~15V」の充電電圧が印加されてバッテリーは充電されます。
バッテリーはそれ自身では電圧は変動しません。(自己放電などで徐々に変化はする)
なにかしらの電気負荷や発電機、充電器が取り付けられ放電や充電をしたときに電圧が変動します。
充電であれば電圧は12.8Vよりも高く変動しますし、放電であれば12.8Vよりも低く変動します。
12.8Vよりも高い14~15Vの場合、バッテリーは充電状態というわけです。
バッテリーの充電電圧を上げすぎてはいけない
充電電圧を上げれば上げるほどよいわけではありません。
電圧を上げれば上げるほど、バッテリー液の希硫酸中の水部分が電気分解されて水素と酸素が発生し、バッテリー液が減ってしまいます。
バッテリー液が過度に減る状態が継続されると
- 極板格子が腐食して早期寿命
- 極板が露出して火花発生→水素に引火し爆発
といった恐れがあります。
適度に充電ができ、電気分解も最低限におさえられる14V程度の充電が自動車では採用されています。
- 電気分解によってバッテリー液が減るのを防止
- 劣化を抑制しながら適度な充電が可能
以上のような理由からバッテリーの充電電圧は14V程度がよくそれ以上に上がるのはおすすめできません。
車両でバッテリー充電電圧を上げる方法はない
14V程度が適切とはいっても「もっと早く充電したい」といった理由から充電電圧を上げる方法はないかと考える方もいるかも知れません。
ですが、充電電圧を上げるような方法は基本的にはありません。
もちろん無茶な改造をして、オルタネータやレギュレータ部品を交換したりすれば電圧や出力は変わると思いますが、労力のわりに得られる効果はほとんどないです。
車両でバッテリーの充電電圧を上げる方法はないといってもいいでしょう。
- 車のバッテリー電圧が14~15Vのときは異常な状態ではなく充電中の状態
- バッテリーの充電電圧は14V程度が適切なので上げすぎてはいけない
- 車両のバッテリー充電電圧を上げる方法はない
走行中のバッテリー状態と電圧
14Vは充電電圧だと説明しましたが、14V以外の電圧状態のときにバッテリーや車両はどういう状態にあるのでしょうか。
電圧によってどんな状態か、だいたいの目安を説明します。
まずは走行中の充電制御の状態と電圧の関係を解説します。
14.4~15V:回生充電
アイドリングストップ車などの充電制御車は、アクセルOFF中に燃料カットをしています。
燃料カットのタイミングで減速による運動エネルギーにより回生充電を行います。
回生充電は燃料をカットしながら運動エネルギーによってバッテリーを充電でき、燃費が向上する機能です。
このときの充電電圧は通常の充電よりも電圧が高くなるように設定されており、14.4~15Vになります。
正確にどのくらいの電圧をねらって充電するかは自動車メーカーの設計思想によって異なる部分です。
回生充電は短時間の減速中にできるだけ多く充電するための機能なので、充電電圧を通常よりも大きくして効率を良くしています。
短時間であることによって、高めの電圧であることによるバッテリーへのダメージも少なくすみます。
13~14.4V:通常充電
通常充電は14V程度の充電になります。
この場合の充電電圧も14Vぴったりではなく、ある程度電圧値に幅をもって充電制御されます。
バッテリーの満充電時の開放電圧は12.8V程度であるため、13V以上であれば充電されていると考えてよいでしょう。
鉛バッテリーは電圧が高くなるほど、受け入れられる充電電流は大きくなるので、充電の効率を良くしたい場合は充電電圧を大きくして対応します。
12.5~13V:充電制御でほぼ充電なし
12.5~13Vの電圧帯は開放状態でのバッテリー電圧と同じです。
走行中にこの程度の電圧を維持するのは、バッテリーに充電をせず内燃機関から発生するエネルギーを車の加速のために集中させて燃費を良くするためです。
基本的にバッテリーの充電はオルタネーターを回してエンジンのエネルギーを電気に変換することで行われています。
エンジンから電気エネルギーへの変換をなくし、加速のためのエネルギーに集中させることで燃費を向上できるのです。
11.5~12.5V:アイドリングストップで放電中
アイドリングストップ中はエンジンが停止するので、発電も停止します。
このとき車両で使われる電気はすべてバッテリーから持ち出さなければなりません。
発電がなく、放電だけの状態になっていればバッテリーの電圧は低下していきます。
充電直後であれば12.5Vを上回るかも知れないですが、放電が続けば12.5V以下の電圧になってしまうでしょう。
走行中に12.5V以下の電圧になっているなら発電が停止して放電状態になっていると考えましょう。
駐車中のバッテリー状態と電圧
ここまで走行中のバッテリー状態と電圧について説明しましたが、つづいては「駐車中のバッテリー状態と電圧はどうなっているのか」についてご説明します。
13V~:走行直後
バッテリーの電圧が高い(13V以上)状態は、走行中の充電の影響がバッテリーに残っている状態です。
特に問題となる状態ではありませんが、この状態ではバッテリーが十分充電されているのかを判断することはできません。
バッテリーの状態を判断したい場合は時間をおいて電圧が安定してから電圧を確認しましょう。
12.6~13V:充電状態に問題なし
12.6~13Vの電圧帯はバッテリーの充電率が80%から100%ぐらいの状態になっているためバッテリーの状態としては良好です。
このぐらいの電圧を維持してバッテリーを使用することができると、バッテリーの寿命は向上するでしょう。
12.4~12.6V:充電不足気味
12.4~12.6Vの電圧だと、バッテリーの充電率は50%から80%ぐらいになってしまっています。
鉛バッテリーは低めの充電率の状態でいることが苦手で劣化しやすい状態です。
できるだけクルマの使用頻度を増やしたり、充電器を使うなどして充電率を回復しなければなりません。
アイドリングストップ車の場合はこのぐらいの電圧で使用されていることも多いので、特別気にする必要がない電圧レベルであるという考え方もできます。
ご自身のクルマの使用頻度や車種などを考慮してどうケアするか判断するとよいでしょう。
~12.4V:かなり充電不足 or 寿命が近い
12.4V以下に電圧が低下しているとかなり危険な状態になっています。
かなり使用頻度が低いクルマであるか、バッテリーの使用年数が経過していて寿命が近い状態です。
バッテリーチャージャーを使って充電、またはバッテリー交換の対処をしておかないとバッテリー上がりを起こす可能性が高いです。
ここまでバッテリーの状態とその時の電圧について説明しましたが、確実にこの電圧であればこの状態と言いきれるわけではありません。
あくまで目安として、このくらいの電圧ではこの状態の可能性が高いという推定したものとお考えください。
バッテリー電圧の確認方法
バッテリー電圧の目安を紹介しても実際に測ることが出来なければ意味がないですよね。
できるだけカンタンに電圧を確認する方法3つをご紹介します。
デジタルマルチメーターを使って確認
1つ目は以下のようなデジタルマルチメーターを使う方法です。
デジタルマルチメーターを使った電圧の測り方は以下の記事で解説しているのでご参考ください。
シガーソケット電圧計を使って確認
2つ目は以下のようなシガーソケットに差し込んで使うUSB充電器兼用の電圧計です。
シガーソケット電圧計を使った電圧の測り方は以下の記事で解説しているのでご参考ください。
Battery Monitor 2 Bluetooth 4.0 を使って確認
バッテリーに取り付けてスマホで電圧確認ができるという商品を見つけました。
Bluetooth接続でスマホで確認できるというのはなかなか画期的です。
まとめ
自動車用バッテリーが14Vのときは充電中です。
バッテリーの充電状態や車両の状態によって、今充電中なのか、充電不足なのかがある程度は判断できます。
バッテリーの電圧を測れるようにしておくとバッテリーの状態を把握でき、バッテリー寿命をのばすことにもつながります。
以下の記事でバッテリー電圧の測り方についても記事にしていますので、ご参考ください。
>>自動車用バッテリーの電圧に対する正しい知識と測り方
アイドリングストップ用バッテリーは過酷な使用で寿命が早い傾向にあります。電圧が低いと思ったら早めの交換を検討してみましょう。
以下の記事でおすすめを紹介しているので参考にしてみてください。